受験を通じて

2015.11.04_for blog_001

 

学校法人である河合塾様が出版している『栄冠めざして』。私は当塾の塾生やその保護者様と大学入試の話をする際,これを頻繁に活用させていただいております。

『栄冠めざして』があるおかげで各大学の募集要項が手元になくとも科目や配点を知ることができますし,さらにはボーダー等の目安も知ることができます。本当にありがとうございます。

 

今回のブログは受験にまつわる話です。

高校入試は岐阜県内の多くの受験生にとって基本的な受験パターンとなる普通科の公立高校入試一次試験に,大学入試は国公立大学の前期試験に絞ります。

国公立大も定員の15%ほどが推薦入試に充てられる時代になったとはいえ,ここを主として大学入試に臨むというのはあまりに危険ですから除外します。

 

高校入試は 5教科の入試が基本で,各科とも均等に100点ずつの満点が500点という形式です。

来春の入試では 5高は内申と入試の配分が 3 : 7 で揃っており,5高を志望するのであれば,深さこそ異なるものの基本的に取り組むことは共通しています。

 

ところが大学入試に目を向けると,同じ国公立大学でもセンター試験 (マーク式) と二次試験 (記述式) を実施するという形式こそ揃っていますが,科目も異なれば配点も異なります。

センター試験は 5教科 7科目で満点は950点 (理系であれば英語250点⋅数学200点⋅国語200点⋅理科200点⋅社会100点) と設定されています。

選択科目である理科は化学⋅物理⋅生物⋅地学から 2科,同じく社会は地歴 (地理⋅日本史⋅世界史) または公民 (現代社会⋅倫理⋅政経⋅倫理政経) から 1科というのが一般的です。

しかし,大学だけでなく学部・学科によっても課す科目やその配点は自由に設定できることになっており,ここが高校入試とは大きく異なるところです。

 

東海 3県の国公立大学の工学部機械工学科を例に挙げて比較すると以下のようになります。

 

【名古屋大】 センター 600〔英語100⋅数学100⋅国語200⋅理科 (物理⋅化学) 100⋅社会 (地歴 or 倫理政経から 1科) 100〕: 二次 1300〔英語300⋅数学500⋅理科 (物理⋅化学) 500〕

【名古屋工業大】 センター 450〔英語100⋅数学100⋅国語100⋅理科 (物理 or 化学 or 生物から 2科) 100⋅社会 (地歴公民から 1科) 50〕: 二次 1000〔英語200⋅数学400⋅理科 (物理) 400〕

【岐阜大】 センター 700〔英語150⋅数学150⋅国語150⋅理科 (物理 or 化学 or 生物から 2科) 150⋅社会 (地歴公民から 1科) 100〕: 二次 700〔英語100⋅数学300⋅理科 (物理) 300〕

【三重大】 センター 550〔英語200⋅数学100⋅国語100⋅理科 (物理⋅化学) 100⋅社会 (地歴公民から 1科) 50〕: 二次 400〔数学250⋅理科 (物理 or 化学) 150〕

 

一般に難関大と言われるところはセンター試験において高い得点率が求められると同時に,社会科の受験科目において “科目の縛り” があったりもします。

さらには,難関大においてはあくまでセンター試験は二次試験を受験するための位置づけとなっており,センター試験よりも二次試験のほうが配点が高く,受験科目数も多くなります。

上記した 4大学はそれが顕著に表れている例と言えます。

 

話を工学部機械工学科に戻しますと,大学で機械工学を学ぶわけですから,数学と物理の完成度を高めておくことは言わずもがなです。

もちろん,入試において必要というだけでなく,それらは大学入学後の学習のための基礎知識であり素地ともなるわけですから,高校生のうちから懸命に努力しておかなければなりません。

合計点に占める各科の割合を見ると,このことも顕著に表れています。

 

【名古屋大】 数学 31.6%⋅英語 21.1%⋅物理 15.8%⋅化学 15.8%⋅国語 10.5%⋅社会 5.3% (数学と物理で47.4%)

【名古屋工業大】 数学 34.5%⋅物理 31.0%⋅英語 20.7%⋅国語 6.9%⋅化学 3.4%⋅社会 3.4% (数学と物理で65.5%)

【岐阜大】 数学 32.1%⋅物理 26.8%⋅英語 17.9%⋅国語 10.7%⋅社会 7.1%⋅化学 5.4% (数学と物理で58.9%)

【三重大】 数学 36.8%⋅物理 21.1%⋅英語 21.1%⋅国語 10.5%⋅化学 5.3%⋅社会 5.3% (数学と物理で57.9%)

※ 名古屋工業大と岐阜大はセンターにおいて化学ではなく生物,三重大は二次で化学でも受験可となっていますが,現実的ではないためセンターは物理⋅化学,二次は物理で固定しました。

 

どの大学も数学と物理だけで全体のおよそ 5割から 6割の配点を占めており,どの教科もバランスよく学習を進める必要のあった高校入試とは全く話が違います。

高1生や高2生の間は,とりあえず名古屋大に行けたらいいなと考えて学習を進めておく。こんな受験生が多いのは,大学入試を高校入試の延長線上だと捉えてしまっているからでしょう。

先述したように,大学入試は高校入試のように 5教科とも一律の配点ではないうえに,科目によっても比重が異なります。そんな中途半端な気持ちで受験に向かってもおそらくうまくいきません。

上記の理由に加えてライバルは岐阜県内や東海 3県内だけでなく全国にいますし,高校入試とは比べものにならない高い競争倍率です。

 

こういうことからも,当塾では塾生たちに早ければ高1生の秋,遅くとも高2生の夏までに志望校を決めてもらっています。

理系・文系に分かれる高2生の初めから受験に向けた準備を着々と進め,日々の課題に追われることなくすべきことを淡々と熟していく。

 

私は「部活を引退してからの高3生の夏からが勝負だ」などとは到底言いません。

というよりも,大学入試に臨む高校生にとって高3生の夏は頑張って当たり前ですし,その時点まで努力を怠ってきた受験生が容易く学力を上げる魔法のようなものは存在するはずもないのです。

その時点までにいかに基礎を固めることができているか。高3生の夏は,この基礎に時間をかけながらきっちりとした上積みをしていく時期なのです。

 

同時に,これまでのブログでもたびたび取り上げているように,当塾は高校生に対して定期テストや各種模試で結果を残すことに特化した指導を一切行ないません。

当塾は『将来を見据えた指導』を行なう塾ですから,私たちにはそんな無責任な指導はできまないと考えております。

模試の判定』というタイトルのブログでも申し上げましたが,付け焼刃の学習がいかに無力なものなのか。それは大学入試や大学入学後に明らかになります。

中学生の頃から定期テストでも岐阜新聞テストのような模試でも,やれ過去問題だ,やれ予想問題だなどと “お膳立て” を使って結果を残してきた高校生にはつらいものがありますが。

 

学ぶことの意味は何なのか。

これを真剣に考え,あれこれと実践することによって子どもたちは成長し,そして未来が拓けてくるのだと私たちは考えます。

受験は社会に出る前にこれを磨き上げ,成長できる恰好の舞台なのです。学びは一生続くものですからね。