他業界から学ぶ

 

先日,岐阜県内にも店舗を構えるカラオケチェーン大手が,全体のおよそ 2割にあたる52店舗を閉鎖するという雑誌記事を目にしました。

全国的にカラオケ離れが進んだことに加え,競合他社との価格競争に敗れたことがその要因であると雑誌には紹介されていました。

 

同じく,岐阜県内に本社を置くスポーツ用品小売大手も,来年までに全体のおよそ 1割にあたる13店舗を閉鎖するとのことです。

小売業はネットとの熾烈な価格競争にさらされていることもこの要因になっていると推察できますが,非常に厳しい判断と言わざるを得ません。雇用はしっかりと守られるのでしょうか。

 

塾業界に目を向けてみましょう。

ここ数年で勢力を拡大し,あちこちで見かける (ようになった) 塾,またはこれでもかと新聞広告を折り込みまくっている塾は10年後にどうなっているでしょうか。

本当に良い組織なら維持ないしさらに発展していけると思われますが,先の事例でも紹介したようにどこかで頭打ちになって衰退・縮小という事例が業界を問わず多くあります。

やはり,毎年の多店舗展開などで急速にその勢力を強めたところというのは,上記と同じような結末が待っていると私は見ております。

 

とにかく塾は人材が最重要であり,これは,競合する他社・他店でも基本的に同じものを扱う小売の業態とは比較にならないレベルです。

完成品である “モノ” を扱う小売業と異なり,教育は目には見えない “サービス” を扱う業態ですから,それを提供する人材によって差が生じるのは当然のことです。

人材育成に力を入れず,パッケージ化されたシステムや教材を前面に出し,勢いというか “ノリ” で突き進んでいるところも数多くあるというのが実情です。

 

私はこの仕事を始めて20年目となりますから,塾において人材育成がどれほど重要かを熟知しておりますし,人材育成がどれだけ難しいかも熟知しております。

優れた人材は一朝一夕には育てられません。しかし,教育は人材で決まると言っても過言ではありませんから,一時的に隆盛を誇ったとしても,人が育たなければ真の発展はないのです。

 

 

塾を含めた「教育・学習支援業」は新卒での入社 3年以内の離職率が非常に高い業界として知られています。

4年ほど前の新聞記事に書かれていましたが,「教育・学習支援業」の新卒 3年以内の離職率は48.9%と突出しており,「製造業」の17.6%と比較するとその率の高さは一目瞭然です。

3年でおよそ 2人に 1人が辞めていく。ご存知の方も多いと思いますが「飲食業」も同様の状況です。

 

いろいろな事情もあってこのような数字になっているのだと思いますが,一般に言われるのは休日が少ない,拘束時間が長いということに加え,概して処遇が良くないということが挙げられます。

もちろん,遣り甲斐を感じて日々頑張っている人も多数いることは揺るぎない事実ですが,およそ半分が新卒 3年以内でせっかく就いた職から離れてしまう状況は異常と言わざるを得ません。

 

こんな状況が続いて教育が良いものになるはずもありませんし,塾業界は少子化による市場規模の縮小に加え,2020年度開始の『新テスト』導入という大きな変革の時期に直面しております。

さも容易く結果を出せるようなことを謳い,受験テクニックに偏重した薄っぺらい知識をつけさせる教育が持て囃され,さらには将来を担う子どもたちを育成する気概を持つ若者が次々と去る状況。

本当にこれでよいのかと不安になりますし,当塾は塾業界のこんな “潮流” に加担しないよう,さらには商業ベースへシフトしないよう,初心を忘れずに子どもたちと向き合いたいと思います。